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文豪語録

明治から昭和くらいまでの文豪たちの名言や名文、格言、迷言、珍言を載せていきます。

チョンマゲをつけた六尺の大男が買出に行くと - 坂口安吾『明日は天気になれ』

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乱世の抜け穴

 終戦後の食糧難のころ、私はこの相撲とりのおかげでうまい物が食えた。なぜなら彼は驚くべき特権階級だったからである。

 戦争中に廃業したのだが、奴め終戦後も五年間ぐらいチョンマゲを落さなかった。このチョンマゲが大変な特権なのである。

 チョンマゲをつけた六尺の大男が買出に行くと、農家の人たちは、お相撲さんか、ヤレ気の毒なと言って米だけでなく、鶏でも卵でも安値でジャンジャン売ってくれる

 米の大袋を背負い、両手に十羽の鶏をぶら下げて大道せましと歩いても、ヤァお相撲さんか、腹がへるだろう、とお巡りさんが全然可愛がってくれるのである。

 だから奴めは、
「チョンマゲに足を向けてねられません」
 と言って五年間マゲを落さなかった。無理しても足はマゲに向きっこない。

 

坂口安吾『明日は天気になれ』より)

 

備考

ちなみに、この相撲取りが買い物に行くといくらでも食べ物をくれる、というエピソードは小説の『青鬼の褌を洗う女』にそのまま出てくる。

主人公の女に恋をしている男が相撲取りで、旅行先で食べるものがなくなったから買い物に行くと、同じように鶏などを担いで帰ってくる、というもの。

坂口安吾のプロフィール

坂口 安吾(さかぐち あんご、1906年(明治39年)10月20日 - 1955年(昭和30年)2月17日)は、日本の小説家、評論家、随筆家。本名は坂口 炳五(さかぐち へいご)。昭和の戦前・戦後にかけて活躍した近現代日本文学を代表する作家の一人である。新潟県新潟市出身。東洋大学印度哲学倫理学科卒業。アテネ・フランセでフランス語習得。純文学のみならず、歴史小説推理小説も執筆し、文芸や時代風俗から古代歴史まで広範に材を採る随筆など、多彩な活動をした。

坂口安吾 - Wikipedia

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