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文豪語録

明治から昭和くらいまでの文豪たちの名言や名文、格言、迷言、珍言を載せていきます。

純粋の秋田県というものは実は近年完成したばかりの雑種なのである - 坂口安吾『明日は天気になれ』

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日本犬の話

 私は一昨年秋田犬を訪ねて秋田へいった。秋田市には秋田犬が見当らず、青森県境にちかい山間の大館市で、秋田犬にお目にかかった。
 この大館市が秋田犬の本場であるが、そこに秋田犬保存会長の平泉さんという犬好きの人がいて、秋田犬の内幕を語ってくれた。
 大館にも純粋の秋田犬は二百七十匹ぐらいしかおらない。秋田犬はテンパーに弱くて死に易いように近親結婚の結果、繁殖率が低くなって絶滅を辿るのみであるという。そこで、大館でも、秋田犬と称して大概雑種を製造、ハンバイしており、また三川秋田と称して、三川犬と秋田犬との交配種が全国に秋田犬と称するものの主流をなしているのだそうだ。
 本当の秋田犬というものはそんなに珍貴なのかと驚いて、そっくりこのことを書いたところが、雑種秋田の製造を職業にしている人々の総攻撃をくらってへいこうしたことがあった。
 しかし私は一番正直なところを一ツだけ書かなかったのであるが、純粋の秋田犬というものは実は近年完成したばかりの雑種なのである。明治時代にはあんな大きな日本犬は存在しなかった。
 日本犬に西洋の大型種を加えて体形が大きくできておる。そしてそれが当然の結果として、日本犬の形態を主にしたのと、西洋犬に近いのと二種類できた。
 この日本犬的なのが秋田犬で、西洋的なのが土佐犬である。だから大館市弘前市の近所には土佐犬の産地があるのである。秋田犬、土佐犬の産地があるというといかにもインチキのようだが、実際はどの純粋種だってそう古い歴史があるわけではなく、いろいろ手を加えて改良したり、より良い新鍾をつくり出したりするところに面白味もあるし、犬好きの極致もそこにいたって極まるのじゃないかと思う。……

 

坂口安吾『明日は天気になれ』より)

 

秋田犬(あきたいぬ)の起源(Wikipediaより)

 アジアスピッツ系の犬種であり、中でも北方のマタギ犬を由来とした中型〜中大型犬の「秋田マタギ犬」が祖先である。秋田県北部に多く、江戸以前には地名から「大館犬(おおだていぬ)」と呼ばれた時代もあった。
 江戸時代から明治時代にかけては闘犬の為に品種改良された「新秋田」が増える一方で、純血系の秋田犬は極一部の狩猟犬や番犬として残るのみに激減した。こういった純血種の減少は他の日本犬も同様であり、血統が絶えるものもあった。 このことから大正時代には希少となった秋田犬を守り、再作出していこうという保存運動が高まり、1931年(昭和6年)には優秀犬9頭が天然記念物、秋田犬として初めて認定された。その後太平洋戦争下では食糧難や軍用犬との交配などで再び純血系の犬が激減したが、戦後、残った少数の犬たちから再作出が行われ固定化に至った。
 このように歴史的に繰り返し他犬種の影響を受けてきた犬種ではあるが、2004年米国の研究チームが犬とオオカミでのDNAを比較した調査によると、調査対象になった世界の85種類の犬種の中で、秋田犬は柴犬とチャウチャウに次いでオオカミに近い犬種であることが判明している。

秋田犬 - Wikipedia

 

坂口安吾のプロフィール

坂口 安吾(さかぐち あんご、1906年(明治39年)10月20日 - 1955年(昭和30年)2月17日)は、日本の小説家、評論家、随筆家。本名は坂口 炳五(さかぐち へいご)。昭和の戦前・戦後にかけて活躍した近現代日本文学を代表する作家の一人である。新潟県新潟市出身。東洋大学印度哲学倫理学科卒業。アテネ・フランセでフランス語習得。純文学のみならず、歴史小説推理小説も執筆し、文芸や時代風俗から古代歴史まで広範に材を採る随筆など、多彩な活動をした。

坂口安吾 - Wikipedia

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