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文豪語録

明治から昭和くらいまでの文豪たちの名言や名文、格言、迷言、珍言を載せていきます。

今期の芥川賞選考委員会に、二つの放送局から録音の申込みがあった - 坂口安吾『明日は天気になれ』

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芥川賞一風景(1)

 今期の芥川賞選考委員会に、二つの放送局から録音の申込みがあったそうだ芥川賞の審査内容を具体的に報告しろというような文芸批評家の意見が諸々にあがっていた折であるから、これも世論の一とみて一度録音してみるのも面白いかも知れない。どうせ一度で終りになるのはわかっている。交替に演壇に上がって演説するのと違って、銘々が自分の席でしゃべる。文士は演説的にしゃべるように心得がないところへ芥川賞の選考委員は選りに選って言葉のはっきりしないのが揃っている。
 宇野浩二氏のように一間離れても聞きとれないようなひとりごとをつぶやくような人もいるし、全然他人の発言と連絡なく電光石火の一言を叫んだと思うと沈黙してしばし語らぬ人もいるし、しかもそれらの議論が一名ずつ別個に行われるわけではなくて「それもある」と合槌を打つ人「それはつまらん」吐き捨てるようにつぶやく人。同時にいろいろの雑音が重なり起って、しかも、それを単に雑音と思うと大間違いで、それはつまらん、というつぶやきがその人の掛値なしの全部の意見であったりするから、それを録音で聞きとることができる道理がないのである。
 なにがなにやらわからないという見本までに一応録音してみるのもお慰みかと思うが、主催者の日本文学振興会では、技術的に録音不可能の理由で拒絶したとの話であった。その方が怪音を未然に防いで、なお結構であったろう。……

 

坂口安吾『明日は天気になれ』より)

 

芥川賞一風景(2)

坂口安吾のプロフィール

坂口 安吾(さかぐち あんご、1906年(明治39年)10月20日 - 1955年(昭和30年)2月17日)は、日本の小説家、評論家、随筆家。本名は坂口 炳五(さかぐち へいご)。昭和の戦前・戦後にかけて活躍した近現代日本文学を代表する作家の一人である。新潟県新潟市出身。東洋大学印度哲学倫理学科卒業。アテネ・フランセでフランス語習得。純文学のみならず、歴史小説推理小説も執筆し、文芸や時代風俗から古代歴史まで広範に材を採る随筆など、多彩な活動をした。

坂口安吾 - Wikipedia

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