文豪語録

明治から昭和くらいまでの文豪たちの名言や名文、格言、迷言、珍言を載せていきます。

名言

私は長崎が好きだ。長崎の食べ物も好きである。そして、チャンポンが何より好きである - 坂口安吾『明日は天気になれ』

長崎チャンポン 私は長崎が好きだ。長崎の食べ物も好きである。そして、チャンポンが何より好きである。ブタの角煮もうまいけれども、あれはそもそも沖縄のラフテとどっちが本家なのであろうか。全く同じ物である。 長崎の角煮はシッポクという宴会料理で、…

人間というものはハッキリと目的が定まり、それに向かって進む時がいちばん強いものである。 - 坂口安吾『明日は天気になれ』

目的を失った脱獄囚 死刑囚が脱獄したというので、その夜の東京は戒厳令下のような物々しさであったらしいが、翌日事も起さずに京都で縛についたのはおめでたい。 彼らが脱走直後誰何(すいか)をうけたときは、一人は本名を名乗り、一人は実物の外人登録証…

人間には個性というものがあって、その特別の限界の中で諸条件に相応した独自のものがなければならぬ - 坂口安吾『明日は天気になれ』

二番目は酒 お前サンはどんな酒や料理が好きか。そんなことを問い合わしてくる雑誌新聞などが少なくない。お前サンの趣味は何か、という質問が一番多い。「なにイ。バカにするな。オレの趣味はモロモロあるぞオ」 と言って威張り返るわけにもいかないからも…

銃後に原バクがチャンと落ッこッてる今日の戦争において、兵隊と銃後に変りはない - 坂口安吾『明日は天気になれ』

楽天国の風俗 ……新国軍の誕生だの徴兵是非などが新聞雑誌に論議されてワイワイ世論をまき起しているけれども、銃後に原バクがチャンと落ッこッてる今日の戦争において、兵隊と銃後に変りはない。むしろ日本のようにせまい国土においては、もうどこにいても水…

日本人は工夫の好きな国民であるが、思いつきの根本がトンチンカンな国民である - 坂口安吾『明日は天気になれ』

木炭の発明 伊豆の伊東で八畳六畳四畳半というたった三間の家に住んでいて、それでも寒くて仕様がなかった。 東京から遊びに来た人は伊東は暖いというけれども、住んでる人間には比較がないから暖さは分らない。肌に感じるのは冬の寒さだけだ。むしろ伊東の…

私は若い時から引越しの性分があった。どこにも住みきれないのが引越し屋なのである - 坂口安吾『明日は天気になれ』

引越し性分 私は若い時から引越しの性分があった。小学校の先生をしたり、大学生になったりして小さな借家を一軒かりて、ノンキ坊の兄と婆やと三人ぐらしをしていた頃から、たいがい私の独断で、東京のあッちこッち引越して歩いた。

日本人全体が精神的にゲリラ化していた時世でもあったのである - 坂口安吾『明日は天気になれ』

立直りの試合の話 私が観戦記者として見物したいろいろの試合の中で世間的にはさして重大な対局ではなかったけれども、私にとってはどれよりも忘れがたいものが一ツある。 昭和二十二年の暮ちかいころであったと思う。その年には、それまで不敗を誇っていた…

ジェット機というすばらしいオモチャが空をとび、原子バクダンという美しい花火が咲いて、眺めは素敵だそうである - 坂口安吾『明日は天気になれ』

小戦国の話 首相が議会で行った演説によると、大戦は遠ざかったそうである。 なるほど、大戦は遠ざかっているのかも知れないが、その代り、どこかの小さい国に小戦が近づいているのかも知れない。 現に、世界大戦は行われていないけれども、朝鮮や仏印では小…

原子バクダンといい、空とぶ円盤といい、こういう怪物が日本に限って実在化するのは、当人には助からない話である - 坂口安吾『明日は天気になれ』

空とぶ円盤 昔はあの山に人を化かすタヌキがでるとか、あの村には人魂がとぶなぞといった。 今日では、空とぶ円盤が村の上空を通って行った、なぞという。 いつの時代を問わず、人生の景物のようなものがあって、半分怖がったり、薄気味わるがったりしながら…

耳よりな話というものは、ろくなことがないものである - 坂口安吾『明日は天気になれ』

戦備ととのわぬ話(2) あるとき、私のところへ犬屋がやってきて、「先生は犬の通だそうですから伺いますが、柴犬やもしくは小型の日本犬はポインターなぞよりも優秀な猟犬だそうですが本当ですか」「それは訓練次第でそうなるかも知れないね」「いえ、生ま…

私はそのようなものの現代版として宝塚少女歌劇を思うのである - 坂口安吾『明日は天気になれ』

最も健全な夢の国(2) 町人百姓はずっといじめられ通しでいながら、実は侍のもたなかった自分のタノシミや文化というものをいつもちゃんと持っていた。下は盆踊から上は天下の芸術に至るまで民は殿様の鳥カゴの中に入れられながらも自分の文化を放したこと…

ノド元すぐればで我々はもう忘れているが、戦争というものは、このような天下のバカ殿様が名君になってしまうほど怖しいものなのである - 坂口安吾『明日は天気になれ』

最も健全な夢の国(1) 信州松代藩主に真田幸弘という殿様があった。 家来の一人に大そう小鳥好きがいて鳥カゴに小鳥を飼って愛玩していたところ、ある日殿様に呼出され、ちょうど鳥カゴと同じようなカゴの中へ入れられてカギをかけられてしまった。 時間が…

銃後に原バクがチャンと落ッこッてる今日の戦争において、兵隊と銃後に変りはない - 坂口安吾『明日は天気になれ』

楽天国の風俗 ……新国軍の誕生だの徴兵是非などが新聞雑誌に論議されてワイワイ世論をまき起しているけれども、銃後に原バクがチャンと落ッこッてる今日の戦争において、兵隊と銃後に変りはない。むしろ日本のようにせまい国土においては、もうどこにいても水…

文士というものは、筆の上で偽わることのできないのが持って生まれた性根なのだから - 坂口安吾『明日は天気になれ』

芥川賞一風景(2) ……文士というものは、筆の上で偽わることのできないのが持って生まれた性根なのだから、各選者の選後評というものを読めば、選考事情はそれで一目瞭然なのである。 しかるにそれを読んでいながら、なお選考委員会の内容を具体的に報告し…

徳川家康は温厚な古狸のように考えられているが、彼の側近の記録によると、自分に不利なことが起ると、たちまち顔色が蒼ざめ、ボリボリ爪をかむ癖があった - 坂口安吾『明日は天気になれ』

エライ狂人の話(4) ……徳川家康は温厚な古狸のように考えられているが、彼の側近の記録によると、自分に不利なことが起ると、たちまち顔色が蒼ざめ、ボリボリ爪をかむ癖があったという。そして、さてははかられたか、もうダメか、なぞと独り言をつぶやき、…

信長がひところ切支丹の最大の保護者であったことは人に知られているが、晩年に於て切支丹の敵となり、外国宣教師の呪いをうけていることは案外知られていない - 坂口安吾『明日は天気になれ』

エライ狂人の話(3) 信長がひところ切支丹(キリシタン)の最大の保護者であったことは人に知られているが、晩年に於て切支丹の敵となり、外国宣教師の呪いをうけていることは案外知られていない。 なにぶん信長の伝記作者の目から見ると、切支丹の問題は…

日本の独裁者で誰がどのような狂気を行っているかというと、まず豊臣秀吉の朝鮮征伐をあげることができる - 坂口安吾『明日は天気になれ』

エライ狂人の話(2) 日本の独裁者で誰がどのような狂気を行っているかというと、まず豊臣秀吉の朝鮮征伐をあげることができる。 秀吉は愛児鶴松を失ったときに発狂状態になった。常態を逸してフラフラと有馬温泉へ保養に行き、鬱々たる十数日の物思いのア…

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